アンビルト➡未建築
【とんでもないことが起きたものである。なんと、生成AIを使った作家が芥川賞を受賞した。言語芸術の重要な部分を担う専門家が、機械の言葉をそのまま作品中に埋め込むとは。そして、そんなものを受賞作に選ぶとは。理解不能な珍事であろう。もろみ五郎】
*なお、姉妹サイト【よろずのことわり】でも同じ問題を論じています。ぜひそちらもお読みください。
知識人「まったく驚いた。なぜそんなものが選ばれるんだろうな。選考委員、いや、賞自体の方針はどうなってるんだ」
文化人「まったくですねえ。なんでも、5%ほどそのまま使ったらしいんですけど、何の臆面もなくそれをしゃあしゃあと話す受賞者の気が知れないですよね」
知識人「選考基準はどうなってるんだろうなあ。まあ、今の選考委員は戦後生まれの若い作家ばかりだから、新しいものに抵抗がないのは理解できる。だがな、上で五郎氏が言ったように、文芸だぞ、文芸。芥川賞っていうのは、純文学作品に与えられるはずだ。5%も機械語の混ざった小説が ”純” 文学なのか。選考委員は総入れ替えだな」
文化人「そうやったっていっしょでしょ、たぶん。同程度の作家たちがあとを引き継ぐんだから。ああ、情けないなあ。日本語って、本当に滅ぶんだろうか」
知識人「まあ、ことは言語だけの問題に限らんだろう。AGIなら人知の10倍、しかも安上がりだ、と、孫正義氏が語っている。そうなればもう、どれが純然たる人間の考えか、まったくわからなくなるだろうし、人間を不要とする分野も続々と誕生するだろうな」
文化人「そうなれば、文学賞なんて無意味でしょうねえ。見分けがつかなくなるんなら」
知識人「今回の受賞を契機として、さかんに議論されるようになるだろうな。ひょっとしたら、受賞者も選考委員も、運営元の文藝春秋社も、それに期待して選んだのかもしれないね」
文化人「でも、選んだってことはですね、肯定的だからでしょ。これからは文芸もこうなるんだっていう認識が、審査委員のなかにあるからこそ、おおやけにしたんでしょう」
知識人「賛否両論巻き起こるのは間違いあるまいなあ」
文化人「当サイトの基本姿勢はどうなんですか」
もろみ五郎「言うまでもなく、<否>である。許し難い暴挙としか言いようがない」
知識人「今後、どうなんでしょうね、芥川賞に続けとばかり、他の文学賞も」
文化人「当然そうなってゆくでしょうねえ。でも、そうなれば、言語芸術の歴史は終焉を迎えますよね」
知識人「終わりだろうな。芸術の分野の中から、<文芸><文学>という項目が消える日が来るんだろうな」
文化人「・・・いちおう、表題の アンビルト についても話し合っておきましょうよ」
知識人「ああ、これはだな、今回の受賞作の主題らしいんだが、受賞者が自分でそう話していたものだ。なぜ未建築と言わないのかは、議論するまでもないね。なんせ、機械語使用作家なんだからな、カタカナ語など問題にならんだろう」
文化人「AIの流れは止められませんからねえ、いつかこうなるって予測はできたけど、日本でいちばん有名な文学賞が真っ先にやることじゃないんじゃないかなあ」
知識人「おそらく、選考委員のなかにも、AI言語を活用して小説を書いてる輩がいるんだろうな。まあ、職業だから否定はしないが、少なくとも、文芸作家の肩書だけは返上しなければならんね」
もろみ五郎「諸君、これは、もっともっとひどいことの前触れだと思わぬかね」
知識人・文化人「思います」
(了)
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