オープン➡営業中

【三歩歩けばカタカナ語にあたる。これがわが日本の現状である。カタカナ語がなければ、われらの日常は成り立たぬのであろうか。われら日本人の舶来信仰は、今に始まったことに非ず。それにしても、ついにここまで来たか、と感ぜざるを得ぬ日々である。もろみ五郎】

 

 

知識人「うちの近所の店の話なんだが」

文化人「また近場話ですか。行動半径狭いですねえ」

知識人「君だって、自宅と職場の往復じゃないか、お互い様だ」

文化人「まあまあ、話をすすめましょうよ」

知識人「わりと評判のいい餃子屋があるんだがね、埼玉かどこかでも見かけたから、チェーン店だと思うんだが、営業時間中は、こんな看板をおもてに立ててるんだな。

<営餃中>

・・・なかなか、しゃれがきいてるだろう。買ったことはないんだが、店の前を通るたびにうれしくなるんだな」

文化人「いいですねえ、その言語感覚は。そんな経営者がもっともっと増えてほしいですよね」

知識人「ところがだ、ほとんどどこの店を見ても、営業中は<OPEN>という札を掲げている。これを裏返せば<CLOSE>だ」

文化人「それは地方に行っても同じですよねえ。過疎地と呼ばれるような町でも、そんなのを見かけますよ」

知識人「悲しいなあ。なんで日本人ってこうなんだ」

文化人「まあ、冒頭の五郎氏の言葉通り、ぼくらの舶来信仰の歴史は古いですからねえ。島国だからあるていどは仕方ないって気もするんですけど」

知識人「自分たちの文化を誇れないっていうのは、民族として、何かが欠けているんだろうか。君はどう思う」

文化人「欠けているんじゃなくて、そういう民族なんでしょうねえ、ぼくらは。この列島に誰かが住み始めて、延々と長い時間が経ちましたけど、舶来信仰だけはしっかり受け継がれてるでしょ。これはもう、民族的特徴ととらえるしかないんじゃないか。ぼくはそう思いますけどね」

知識人「しかしなあ、けっこう悲しい特徴だよなあ、それ」

文化人「まあ、中華思想やユダヤ人差別よりは、はるかにましじゃありませんか。誰に迷惑かけるでもなし」

知識人「そう言われればそうだがな、でもなあ、それがいわゆる日本人らしさ、日本人的なもの、となると、いやいや違うんだ、と否定したくなるんだがなあ」

文化人「まあ、ものは考えようですからねえ、舶来信仰も、裏返せば、何かいい特長になるんじゃないかって気もしますがね」

知識人「舶来信仰を裏返すと、何になるんだね」

文化人「民族主義」

知識人「全然よくないじゃないか。外人さんいらっしゃい、の裏返しは、外人お断り、なんだからな。ちっともいい話じゃないよ。表と裏の中間あたりに何かないかなあ」

文化人「まあ、あるとすればですね、当たり障りのない平和主義か何かでしょ」

知識人「とげのある言い方だな。君はいつから極右的物言いをするようになったんだ」

文化人「とんでもない。ぼくは右でも左でもない、真の平和主義者ですよ」

もろみ五郎「君たち、論点がかなりずれておる。きょうの主題は オープン だ」

知識人「主題ってほどのもんでもないでしょう。要するに、営業中とか、店を開けるときなら 開店、とか、日本語にしようよ、って話ですよね」

文化人「このサイト、始まってまだちょっとですけど、なんだか意味のない対話をだらだら続けてるだけって気がするんですよねえ」

もろみ五郎「そんなことはない。前回も言ったであろう。いつか実になる日が来るのだ」

知識人「来ますかねえ、そんな日が」

文化人「そうそう、ただの自己満足で終わるんじゃありませんかねえ、この調子で続けても」

もろみ五郎「では、どうするのがいいと君たちは思うのかね。批判ではなく、建設的な意見を言いたまえ」

知識人「例えばですよ、きょうの オープン ていうのは、日々目につく日常的な単語ですよね。そういうのと、公的発言で聞いたもの、或いは、国の政策や方針にまで使われてしまっている英語、エレベーターみたいに、無理やり日本語化したら混乱を招きそうなもの、等々。いろいろと種類分けするべきだと思うんですよ」

文化人「そうそう、ただやみくもに話しても、結局いつも同じ結論に達するだけで、徒労に終わる気がするんですよねえ」

もろみ五郎「気が付かぬかね、君たち。今いろいろな意見が出たがね、これらはみな、ここで対話したから出てきた発想であろうが。まずはこの場に出すことが大切なのだ。話し合うことによって、方向性が少しずつ見えてこよう。きょう話し合ったことには、じゅうぶん意味があったのだ」

知識人「なるほどね。確かに、言葉を吐き出すっていうのは、さまざまな発想法の基本でもありますよね」

もろみ五郎「その通りである」

文化人「じゃあ、次回からもっとそういうふうに変えていきたいですねえ」

もろみ五郎「ワードプレスの扱い方が、いまだによくわからぬ」

知識人「勉強してくださいよ、そのぐらいのことは」

文化人「そうそう、勉強大好きなんでしょ、五郎氏は」

もろみ五郎「明日も早朝から出勤せねばならぬ」

知識人「言い訳はやめましょうよ」

もろみ五郎「わかった。構成上の工夫をしてみよう。乞うご期待である」

(了)

2085字

 

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